映画館で観るのは二度目。冒頭、非常にゆっくり
階段のきしむ音だけで
「歩く」
揺れるロープの動きだけで
「人間の体の重み」
等が表されてる。
余計な音を入れないというだけでも、このシーンは鮮やかに印象に残るが
これを効果的に活かしてるのが映画館という密室だ。
明るい部屋で生活感のある音に囲まれて観てたら、多分この気分は味わえない。
また、冒頭の階段や処刑のシーンなどの白黒シルエットは、真っ暗の場内だと更に美しく映えるのに気づく。
カリ城は「水」の演出が上手い、
とアニメ夜話に書いてあったけど、
マモーは「影」が冴えている。
影だけで人の動きを表したり、
大きく影を引き伸ばしたり、シルエットだけ、線描だけ、等など、
あらゆる演出の「影」がそこにある。
それらが映画館という暗闇で、ひときわ明暗の輝きを放つ。
監督の吉川さんは
「映画に相応しい大きなスケール」
を意識されてたそうだが、この「大きさ」に対する演出効果も映画館で観ると特にはっきり判る。
●大仏
●ピラミッド
●ダンプカー
●砂漠
●宇宙
●太陽
●空一面に飛ぶ蝶
●巨大脳みそ(笑)
などなど。
視覚的にその「でかさ」「広さ」を楽しめるものが具体的に畳み掛けるように並べられている。
これらを実際に大きな画面で見せることによって、そのものの持つ迫力を相乗効果で存分に発揮させているのだ。
実際、この冒頭の大仏顔アップは大画面で見ると、まるで本物の大仏を目の前にしてる気分でしたよ^^
納谷さんの声が若くて嬉しい(笑)西村さんは何度聴いても絶品の上手さ。
それだけに、赤塚不二夫さんと梶原一騎さんの声はかなり聴いてて辛かった;
話題先行なのはわかるけど、映画館のこの音響の素晴らしさと場内の広さに響き渡るこの声は、テレビで聴くよりお粗末さが際立つ。
画面が時々荒れる。フィルムにゴミが入ってるみたい。
映画館では良い物も悪い物も、より目立つ。
個人的に惚れたのは、蝶の舞うシーンと、宇宙での脳みそ浮遊。
絵の上手さとかそういうレベルの問題じゃなくこれも画面の広さならではの味わい。
例えれば広い景色を一望して
「絶景かな」
という時の気分を満喫してる感じ。
ビデオを見てマモーのレビュー書く前に、映画館で見てよかったと思えた。
何故ならテレビで観たのとは、受ける印象がだいぶ違う。
劇場の「大きさ」「無音」「暗闇」
これらが効果的にこの映画の魅力を引き出しているのだ。
「マモーはつまらない」とビデオで観て思った方には、これは
「映画館の演出効果があって、活かされる場面の多い作品」
であり、
小さな画面で明るく雑音に囲まれた状況では、その魅力は存分には伝わりかねる
ことを述べておきたい。