Lupin Event

 
ルパン三世シークレットナイト2006
5月20日(土) 東京都池袋 新文芸坐 〔前編〕
 
 
 
 
5月13日の同イベントでは、モンキーさんのトークショーを録音しようとしてMD操作に失敗し
 
僅か5秒しか録音出来なかった私。5秒でどないせーーちゅうねん。
 
 
 
 
 
既に自分を信じられなくなっていたメカ音痴の己は、今回アナログの録音カセットを持参。
 
もしや携帯写真もパソに取り込めなかったらという場合を考え、駅の売店で「写ルンです」を買う。
 
それだけ自信たっぷりに「写るんです」といってるからにはきっと写してくれることだろう。
 
(何気に痛々しい)
 
いや、一応デジカメも持ってるんですが・・・。
 
去年の5月に2、3度触ったきり、シャッターの切り方忘れてます;
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
さすがに今回は迷わずに道を辿る・・・が。
 
前回と同じ道行く人達の様子が違う。
 
モンキーさんの時はアーティスト系やお嬢様系の20代くらいの人達が流れを作っていたのだが。
 
 
 
 
 
大きなたすき掛けの黒いバック。
 
30代以上の方が多そうだが、どこか年齢不詳っぽい。
 
服装にはあまり頓着してなさそう。
 
 
 
 
 
同じ「ルパン」でファンのタイプがこうも違うんだろうか?
 
一見オタクっぽくも見えるが違う。それよりも実務的な匂いがする。
 
いってみれば、アニメーターや、職人。
 
これは自分もアニメーターだった経歴あるから判る。
 
今の時代のアニメーターがどういう生活かは知らないが、今日のゲストはアニメ界の大御所の大塚さんだ。
 
やはり同じ志で憧れてるアニメーターやその卵さんもこの中にはいるのだろうと思う。
 
こないだの仮装人さん達と似てる方を発見。
 
服は普段着みたいだけど違うかな。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
エレベーターで上に上がったとき、声を掛けられた気がした。
 
振り返る。手の平をひらひらさせて佇む若い男性。
 
「yusinさん!来られたんですね」
 
その後ろにほんわかした笑顔の女性。
 
「たいやきさんです」
 
とyusinさんが紹介して下さった。
 
 
 
 
たいやきさん!
 
 
 
 
勿論存じてますとも。ルパフジ大好きで、自己流造形の可愛い絵を描かれる方。
 
一度観たらあのイラストのデザインインパクトは忘れられない。
 
yusinさんのオフ会レポートで自分の事ご存知でいらしたのは知ってたけど、実はそれが意外でもありました。
 
だって、自分はさんざんサイトの中で「辛口フジルパ」「ゴエフジ」「次ル」大好きだと言いまくってる;
 
カップリング趣向が違う方に此処を観て頂けてたというのが驚きで。
 
 
 
 
ここで話は横道に逸れる。
 
私の場合、「自分はこうだ」という自己主張ははっきりやるし、勿論お仲間がいれば嬉しい。
 
 
 
けど、それはあくまで個人的な捉え方や嗜好。
 
 
 
感性は自然派生的なもの、人それぞれだし、それでいいじゃない、と思ってる。
 
しかし、ここのところを
 
『自分の考えを押し付けてる。他の趣向性の方に攻撃的なんだろう。そんな事いうな』
 
等と誤解してる方もたまにおられる。
 
特に自分に限った事でもないが、インフォメ必読という約束事を無視して守ってない人に限って、そういう勘違い暴走するんだよな;
 
 
 
 
 
「はじめまして。たいやきです^^」
 
あ。この方は大丈夫。そういう誤解をされてないのは、様子ですぐわかりました。安堵。
 
 
 
 
 
 
 
 
こないだトムちゃんの会員登録したんで、私は割引でチケット購入。
 
何時の間にか階段にずらり人が並んでる。前回より早く着いたが、人はもっと多い。
 
たいやきさんが先に来られてたらしくて先に整理番号で入る。席を取ってくれるそうだ。
 
順番待ってる間、yusinさんとお互いお国言葉の土佐弁と福岡弁で喋ってみたりする。
 
yusinさんは此処に来る途中、石子さんとお会いしたらしい。
 
 
 
 
ロビーに入ると案の定、大塚さんの色紙が飾られてた。
 
こないだには、なかったポスターもある。
 
大きな新ルパンの顔のアップに近づくと、それはルパンの公式場面のコラージュで作られてたものだった。すげーー。芸術的。
 
 
 
 
たいやきさんが取って下さってた席は前列二番目の中央。
 
ここならアナログ録音でもはっきり録れそう
 
(まだ心配してる・笑;)
 
たいやきさんは、モンキーさんの時も来られてたそうだが、顔が判らなかったので私を見つけられなかったそうです。
 
 
 
いよいよ開演。
 
 
 
大塚康生×石子順(聞き手)
 
 
 
 
※はじめに
 
これはほぼ「実録」に近いです。極力、管理人の編集をなくし、ありのままの会話を再現しました。
 
その為、文章としては繋がりの上手く見えないところもあると思いますが、「口語体」のニュアンスをそれぞれ感じ取って頂ければと思います。
 
ただし「ええと」「ああ」「やっぱり」等は、考える間や意図的な強調部分として言われてると思われるところは残して記載し、
 
むしろ口癖と思われるところ、言いなおし、場繋ぎの合いの手等は省略しています。
 
大塚さんは身振り手振り大きくマイクを手元から離される場合も多く、言葉が今一聴き取れない部分もありました。
 
そういう箇所はむしろ誤った記載で誤解を生むほうが不味いのですっぱり省略しています。
 
尚、聞き取れたけれど、意味がつかめなかった部分はカタカナにしました。
 
話し方の癖・方言的な発音によると思われる物も音声表示に沿って表示・補足説明で意味を解説しています。
 
 
 
 
 
 
【】=司会のお姉さん
 
「」=大塚さん
 
「‐‐‐‐」:石子さん
 
太字:会場の様子
 
色:その他
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オープニング
 
 
司会のお姉さん登場。
 
 
 
 
 
モンキーさんの時はクールなパンツスーツだったが、今回はカジュアルな黒Tシャツ。
 
よく見ると会場で限定数販売されてる大塚康生さんイラストプリントのシャツだ。
 
大塚さんがゲストということもあるのだろうが、宣伝も兼ねているのだろう。
 
 
 
 
 
【本日は旧ルパンやカリオストロの城など、数々の名作の映画監督でお馴染みの大塚康生さん、
 
そして漫画研究家・石子順さんお二人によるトークショーです。
 
皆様どうか盛大な拍手でお迎えください。
 
大塚康生さん、石子順さんです。どうぞ】
 
 
 
 
 
会場拍手
 
 
 
 
 
【それではお二人による楽しいトークショーでお愉しみ下さい。お願い致します】
 
 
 
大塚さんの略歴
 
 
 
------皆さんこんばんは。(マイクが入ってなくて苦笑いされる)
 
 
 
 
-----えーーと、(大塚さんに)お久しぶりでございます。
 
 
 
 
-----えーーとお忙しいところ本当に・・・あのーー・・・えーー・・ちょっと前にこの回やりましたね。
 
ちょっと、数年ほど前。やりましたね(大塚さん「2002年」)2002年でしたね。ええ。
 
で、いつもワクワクしてルパン三世のオールナイトっていうのは、このように一杯集まってらっしゃって
 
凄いなあと思って、いつも、その、こういうことが、やっぱりあるんだということで、
 
今日はあのーー、時間があまりありませんけど私、なるべく、話す事は少なくして、
 
僕から大塚さんに色々な事お話していこうと思います。宜しくお願いします。
 
で、早速ですけどあの、一番最初に大塚さんがアニメに入る前のいきさつ、
 
ちょっと簡単に・・・までの凄い色々経歴がおありのようで。
 
 
 
 
「ええと、私はあのう、昭和6年の終わりですか、終戦の時に14歳だったんですけどね。
 
山口県で生まれて、東京に出てきて厚生省の麻薬Gメンてのをやって」
 
 
 
 
-----麻薬Gメン。
 
 
 
 
「ええ。それで東映が発足するちょっと前。
 
東映に買収された日動っていう配下アニメーションが生まれましてね。
 
東映の一期生よりも古いです」
 
 
 
 
-----ああ、そうですか。あの私はこの・・・
 
東映の第一作の東映動画の白蛇伝を観たときは何ともいえない
 
『日本映画、日本でこんなのが出来た』
 
と思って。あの時からもう関わっていらしたんですね。
 
 
 
 
「ええ」
 
 
 
 
-----はあ。そうするとええ、先生、やっぱりホルスの大冒険ですね、あれがものすごい時間掛かった・・・。
 
 
 
 
「ホルスはね、東映の白蛇伝から数えて10本目なんです」
 
 
 
 
-----10本目ですか。
 
 
 
 
「ええ。で、あの映画、大失敗しまして。人を代えるみたいですね」
 
 
 
 
-----人を代えらなきゃいけないみたいな大失敗?
 
 
 
 
「ええ」
 
 
 
 
-----作品としては大成功ですか?
 
 
 
 
「どうでしょう。あの、ま、それは僕がいうじゃないですけどね。
 
あの、その後何歳くらいの時になって辞めたんですかね」
 
 
 
 
-----あの・・・ホルスがお客が入らないで、それで責任で辞めたんですか。じゃない?
 
 
 
 
「ええ、まあそういうことで(笑)そういうことになっとるんですが」
 
 
 
 
-----あの凄い映画がアニメがなんで当時・・・やっぱ早すぎたんですかね。
 
 
 
 
「いや、ちょっとまあこれは・・・ありますけどね、難しいとこがあったんでしょうね。
 
一番いいシーンがヒルダの子守唄みたいなとこで、静かなんですよ。
 
一番静かな場面なんだけど、子供がダーーッと走り回るんですね」
 
 
 
 
-----映画館で。
 
 
 
 
「ええ。だから子供がダーーッと走り回るってのは、漫画映画にとっては致命的でしょ」
 
 
 
 
-----はあ。ああいう漫画映画っていうかアニメーション、見た事なかったんでしょうね。
 
 
 
 
「そうですね。東映漫画祭りってのは、やっぱり、お母さんと子供。
 
子供に当たらないっていうのがやはり問題あったんでしょうね」
 
 
 
 
旧ルパンの時代
 
 
 
----私はその頃、映画記者会ってのがありまして、そこで、あの、この映画さかんに宣伝・・・
 
頑張って、東映本社まで行って試写を観に行って話したりして、
 
こんな凄いのあるのかって気がして感動っていうか胸が震えるような感じをして、
 
どうして作ってるのかなと思って、だいぶ経ってからやっとお会い出来て、
 
そういう中で、ルパンになっていく訳ですけど、ルパンのアニメーションが出来て今年で35年という節目に・・・
 
 
 
 
「テレビシリーズ?」
 
 
 
 
-----テレビシリーズで。
 
あの、モンキー・パンチさんから言わせると、元の漫画を描き始めて来年で40年で。
 
モンキーさんが30歳の時だったらしいです。
 
 
 
 
「ああそうですか」
 
 
 
 
-----で、このアニメが始まる時はじめて、
 
元の漫画のルパン三世を御覧になった時、どう思われましたか大塚さんとしては。
 
 
 
 
「ええ、上手いと思いましたね。
 
昨日もねアメリカで、全米でDVDの※ビーエスが、カリオストロが行われるんですが、
 
記者が来ましてね、まあ、あまりよくご存知ない方で。
 
テレビルパンがあって、その元で長編があるんだっていうのが判んなくってね、
 
はじめっからから長編があったと思ってたらしいんです。
 
だからそれを説明するのにちょっと時間掛かったんですけども。
 
まあ、あの重層構造になってましたけど、物凄い参加してて、
 
毛深いのでいえば、血が入ってるからデコボコがないわけですね。抵抗も違いますけども。
 
ジュウスイリョウに色々違いがあって。よく今日まで生きてる客だなあと思ってますけどね」
 
 
 
 
 
※ビーエスあるいはディーエスが聴いたママの音声表示。全体の意味としては「リリース」ではないかと補足情報有り。
 
 
 
 
 
-----ルパンのあの長い足っていうのはアニメーションの・・・難しかった?
 
 
 
 
「そうですね、あの・・・画面のね、普通のサイズの画面のね、
 
全身で立ってるフルサイズっていうんですけどね、全身入れると頭小さくなっちゃうんですよ。
 
やっぱり、頭が大きいというのは大事な事でね、
 
その・・・7・3・・・七頭身になっちゃうと、こんな頭になるんですよ。
 
(身振り作る)
 
やっぱり4頭身くらいが一番描きいいですね。3頭身・・・でもいいんですよ。ちょっと小柄の。
 
子供向けだから子供だった方がいいんですよ。
 
世間ではね、子供向けとはいえなくなって。4頭身が大人になったんですかね」
 
 
 
 
-----あの頃のテレビアニメの中でショックだったのは
 
やっぱりあれは子供が大人向けを観るってのは・・・大変だったという。
 
 
 
 
「そうですね。本当にアニメーションっていうのが不況でね、
 
要するに人間が中入ってやってる仮面ライダーとか、あれが大流行してね、視聴率なんかが落ちて、
 
それが巨人なんかが出てきて、ヒットしてね、持ち直したっていう時代だったですかね。
 
最初のルパンをやった頃は一杯人が来ましてね、仕事が欲しいって言ってね」
 
 
 
 
-----あれは高畑さんも宮崎さんも始めから関わってたんですか。
 
 
 
 
「いや、始めは関わってなかったですよ」
 
 
 
 
-----じゃあ大塚さんが引き入れた?
 
 
 
 
「ええ、そうそう(笑)大隅さんがね、頑張られてたんですけど、要するに大人向けは視聴率は6%でね。
 
局が呼びつけてね、なんてことするんだ、ってので、東京ムービーの当事者もいて、平謝りに謝ってね、
 
何とかしますからって事で帰ってから緊急会議やって、大人向けやめようと。子供向けにするんだ、と。
 
でも大隈さんは青年漫画って事でやってましたからね、
 
その・・・なんていうかこう・・・嫌なんですね。路線変更嫌だったの。
 
それで大隅さん結局席を立って、辞めるってことになったんです。
 
で、演出が空席になったんで、宮崎さん、高畑さん、来てくれって呼んで。
 
やってくれましたけど当時匿名でね。嫌だったんでしょうね」
 
 
 
 
-----宮崎さん、高畑さんの今までのイメージからすると、
 
それまでの仕事からいうと、「ルパン三世」っていうのは、あまりにもかけ離れた感じがして。
 
 
 
 
「そうですね」
 
 
 
「ルパン」に対する宮崎さん
 
 
 
-----宮崎さんは最初ルパンの事、どんな事言ってたんですか
 
 
 
 
「ボロクソに言ってました」
 
 
 
 
-----ボロクソですか。例えばどんな具合に
 
 
 
 
「いやあ、そりゃまあ要するに、その・・・色気あってね、
 
大人向けは子供の場合には作るべきじゃないというような感じでした」
 
 
 
 
-----やっぱり泥棒なんか宮崎さんの感じでいうと、抵抗あったんですね。
 
 
 
 
「あったんですね。抵抗ありましたね。
 
だから今日も皆さん御覧になるかもしれないですけど、
 
ルパンの最終回の、シリーズの最終回なんか、赤い服を着たルパンが嫌いなんですよ。
 
宮崎さんは最初のカリオストロの、テレビの最後のでも関わってますよね。
 
彼なりのイメージがありますからね」
 
 
 
 
-----カリオストロっていうと長編アニメでは2作目ですけれど未だに物凄い人気があって、
 
宮崎アニメの元だって言う人もいるし、色んな事をいわれてますけど、
 
あれはやっぱり凄いものだと思って、
 
モンキーさんで言わせると、あんまり毒がないので・・・あまりにも可愛いらしすぎて(笑)
 
女性が可愛すぎて、ルパンもちょっとお人よしすぎて、ちょっと毒がないなんて、盛んに仰るんですけど。
 
 
 
 
「ええ。あまり好きじゃないみたいですね。カリオストロは」
 
 
 
 
-----優しすぎるからですか?
 
 
 
 
「よく判んないですね(^^)」
 
 
 
 
 
会場、笑い
 
 
 
 
 
-----あれを作りながら、どうだったんですか、・・・宮崎さんも。
 
 
 
 
「あれは本当は嫌だったんですよ。
 
コナンって作品やりまして、最初のテレビシリーズ、最初の最後ですね彼は。
 
テレビシリーズ担当するんでどうしても僕に来てくれというんで、シンエイ動画ってのを辞めて、日本アニメーションに移ったんですけどね。
 
コナンが済んでね、ちょっと仕事がない感じだったんですよ(笑)
 
で、当時社長が僕に次の演出やれと。で、僕は演出嫌なんですよね。
 
断るには・・・オレはコナン手伝ったんだから今度俺を手伝えと。来てやってくれと。
 
それで宮崎さん来てくれたんですよ。
 
嫌だなーー・・・と言いながらやってましたね。やりたくないって、大嫌いだって。
 
手垢が付きすぎてるっていうんですよ。
 
あまりにも色んな人が弄って手垢が付いて新鮮さがないんですよ自分の。
 
だから嫌だなーーって本当吐きながらね・・・すいません。やってましたね」
 
 
 
 
-----嫌だなーーと言って作ったには凄い作品だと私は思うんですけどね。
 
 
 
 
「そうですね。制限があった方がいいんじゃないんですか、人間は。
 
やりたい放題やると、あまりいい物出来ない(^^)」
 
 
 
 
 
会場、笑いと拍手
 
 
 
 
 
-----でもあれはルパンのイメージ全部変えたし、その・・・やさしさっていうか、
 
ルパンってあんないい面があるのかって思わせるような、ね。
 
 
 
 
「ああいう人間が好きなんですよね、宮崎さん」
 
 
 
 
-----そうですか。一面で言うと思いがけないというか意外な結果になって。
 
ただあれは劇場ではちょっと封切りはあまり芳しくなかった。
 
 
 
 
「ええ、当初はね」
 
 
 
車と機関車と拳銃と
 
 
 
-----あそこに出てくるルパンなんか乗ってる車とか、全部あれは大塚さんの。
 
 
 
 
「ええ。あれは僕が乗っちゃった車なんですけどね。
 
庭先に停まってる車だから描きやすいの♪」
 
 
 
 
 
会場、笑い
 
 
 
 
 
-----あの車に乗ってたんですか。
 
 
 
 
「あの車で九州・北海道まで行ったんです」
 
 
 
 
-----じゃああれは大塚さんの愛車をそのまま・・・。
 
 
 
 
「そうですね。描きやすいもんですからね。
 
お団子みたいでショ。非常に描きいいんですよ・・・今でも描きいいんです」
 
 
 
 
-----大体元々、機関車とか車の・・・もう物凄い精密な、そしてリアルな絵をお描きになって、
 
ずーーっとやってこられた方ですから、メカが好きだったと?
 
 
 
 
「メカが好きっていうとちょっと語弊があるんですけど。純粋な形はありますな」
 
 
 
 
-----厚生省のGメンだった時の扱ってた拳銃なんかが、そのまま作品に。
 
 
 
 
「そうですね(笑)僕は厚生省に入ったのが22歳だったんですけど、
 
拳銃持たされてはいないんですけど・・・
 
麻薬Gメンという民間社・・・要するにGメンの補充職員だったんですけどね。
 
押収と麻薬の、検査長乗っけたり、麻薬Gメンの拳銃なんかの手入れをするんですよ。
 
分解掃除やるんですよ。毎回預かりに来た奴全部ばらして、調べてね、
 
悪いパーツを注文して取っ替えてね、そんなことやってたから、よく知ってたんですよ。
 
べレッタっていう峰不二子が使ってる拳銃、
 
それから銭形が持ってるガバメントっていうあの2丁は、いつも弄ってました」
 
 
 
 
-----眼をつぶってても組み立てられるという?
 
 
 
 
「いや、そんなことない(笑)」
 
 
 
 
 
それは次元(管理人、心の突っ込み^^)
 
 
 
 
 
-----いづれにしても、そういう処がカリオストロにも凄く・・・。
 
 
 
 
「まあ、知ってる範囲で描くからねえ。
 
知らないもん描くと調べるまで時間掛かっちゃうっしょ」
 
 
 
「カリオストロ」に対する大塚さん
 
 
 
-----大塚さん自身はカリオストロはどういう評価っていうか。
 
 
 
 
「照れくさいんですね、あれは。
 
なんかこう・・・クラリスだって・・・こう・・・抱けばいいのにね、やめたりね。
 
・・・・ちょっと宮崎さん、変ですよね(^_^.;」
 
 
 
 
 
会場、笑いと拍手
 
 
 
 
 
「抱いてもおかしくないでしょ?あれが宮崎さんの「止め」なんですよね。
 
非常にストイックな人ですからね、抱いたら最後だって想いがあるんですよね。
 
・・・・そんな事ないでショ?」
 
 
 
 
 
会場、笑い
 
 
 
 
 
----宮崎さんってそんなに純粋なんですか。
 
 
 
 
「純粋な人ですね・・・今でもそうですけどね」
 
 
 
 
-----いや、純粋っていえば、この大塚さんの「おもちゃ箱」。
 
これ、愉快な。これホルスの頃に中々完成しなくて。その時のスタッフを全部落書してるんです。
 
これいかにしてアニメーターの方達がアニメが中々出来なくて、
 
欲求不満になりながら、アニメ現場でこんなことやってるっていう。
 
 
 
 
「落書・・・ですね」
 
 
 
 
-----凄いっていうか、大塚さんだけじゃなくって、
 
アニメやる方は皆こういう感じでいつもキュウキュウしながら。
 
 
 
 
「今でもけっこう皆落書してんでしょうね、こうやって」
 
 
 
新ルパン
 
 
 
-----そういう中でルパンがこれだけズーーときて、
 
ルパンがこれだけ長続きするっていうのは大塚さんってどういうお考えですか?
 
 
 
 
「やはりモンキーさんの原作が魅力あったんでしょうね。
 
そう思いますよ。ちょっと掴み処がないようなね。
 
誰が正しいのか誰が悪い奴か判んないような曖昧さっていうのが。
 
あんまりはっきりさせてないですよね。
 
 
 
それともう一つはアンサンブル。個性的なんですよ。段々崩れましてね。
 
最初の時はまだそういう意見はあったんですけども、つまり独立してるんですよ、皆。
 
次元も※五右衛門も独立した人間なんですよ。
 
たまたま一緒にいるだけだっていうような感じを持ったんですけども。
 
パート2くらいからね、局の指示なんでしょうね。金魚のウンコみたいにくっついて歩くんですよね。
 
(会場笑い)
 
 
 
あれでね、僕嫌になりましてね。
 
赤い背広着て、皆であんな事やってるんじゃね、すぐ判るでショ?
 
(会場笑い)
 
やっぱりね、すぐ判っちゃいけないっていうスリルがないと。銭形との関係なんかも
 
『ルパン見つけたぞ逮捕だ』
 
っていうけど、見つける前に苦労したとかね、そういう気分ないとね、
 
なんか・・・・あれじゃ見つかるよ、って感じ」
 
 
 
 
 
会場笑い
 
 
 
 
 
-----いかに銭形がちょっと抜けてても、あれだったら捕まると(苦笑)
 
 
 
 
「ええ。ああいう風なシナリオの発展形は判んないです。僕は多分しないですね。
 
最終的に言えば・・・いつも観てる馴染みでね、5年出てきていなかったっていう。
 
もうひとつは局に責任があると思うんですけどね、5人平行に出せっていうんですよ。
 
僕は一人ひとりの、めいめいで描こうと思ったんでね。
 
だから峰不二子がいないシリーズがあってもいいと思った。
 
※五右衛門が中心のシナリオだけでもいいと思った。
 
それで話を長引かそうとしたんだけどね、5人の出番を一緒にして欲しいって言うんですよ。カット数。
 
だからそんな事言われるとね、出来ないですね。
 
その辺が・・・宮崎さんがカリオストロを引き受けるとき嫌だった。
 
手垢がついてたって言ったのは、その事だったと思った」
 
 
※大塚さんは「五右衛門」という表記に拘る方なのでそう記載してます。
 
 
 
今「ルパン」を作るなら
 
 
 
-----もし大塚さんが新しいルパンを作って欲しい、なんていわれたらどういう感じの世界を?
 
 
 
 
「もう駄目でしょうね。
 
ふたつあるんですけどね、ひとつは僕もう75ですからね、ちょっとエネルギーがもう駄目で・・・。
 
そして、作るんだったら壊してやりたいから。壊したいから。
 
普通のルパンじゃなくてね、目茶目茶なルパンにしたいんですよ」
 
 
 
 
-----モンキーさんのイメージじゃなくって?
 
 
 
 
「いえ、モンキーさんのイメージでいいけどね、話は目茶目茶にしたいですね」
 
 
 
 
-----例えば『モンキーが捕まって絶体絶命』?(笑)
 
 
 
 
「いや、(それは)ないですけどね(笑)
 
やるとすれば、それしかないと思ったんですよね。ひっくり返らないと面白くならない」
 
 
 
 
-----ファンからいうと大塚さんが全部作られて、演出もやられると
 
夢の又夢の様な凄いルパンが・・・。
 
 
 
 
「いやいや、酷いの作ったな、って皆ブウブウ言いますよ。
 
あのね、ルパンっていうイメージが出来てるんですよ。かなりルパンが好きな人でも・・・
 
お色気がなきゃいかんとか、一種の期待する要素がありますよね。
 
水戸黄門がね、実は全国漫遊なんてしなかった。それが事実です、歴史的には。
 
それを変えちゃうとね、誰も観ないでしょうね。出来上がった物ですからね。
 
※立川文庫以来ね。明治なってからね」
 
 
 
 
-----ルパンも既にもう形が決まっちゃってると。
 
 
 
 
「ええ。有名になってしまうとそうなっちゃうんですね。
 
宮崎さんが一回ずつ作品を変えるのはそうだと思うんですよ。
 
既に有名になった物を作りたくないって」
 
 
 
 
-----ナウシカの後、ナウシカの続編作れ作れって随分あったけど、結局あの方は作らなかったし。
 
そういう意味で言うといっぺん作ったキャラクターはその後作らないって。
 
 
 
 
「そうですね。作り手としてはやっぱり、そういう気持ちってある。宮崎さんはありますね」
 
 
 
 
-----大塚さんもそう?
 
 
 
 
「ちょっとね」
 
 
 
 
-----でも大塚さんなんかイメージの其々めいめいでの感じのルパン達っていうのは・・・。
 
 
 
 
「ちょっと僕忙しくてね、色んな趣味があってね
 
(会場笑い)
 
模型が好きだったりね、最近狛犬に凝っててね、
 
それであっちこっち見て歩いてるんですけどね、神社の、あれが好きなんですよ(笑)
 
 
 
あのね・・・何かね、凄い芸術家がいるんですよ。
 
ただのね、墓石を彫ったりするね、狛犬って仏像と違ってね、形式がないからね、
 
ぼやあとしかないもんだからね、思わぬのが出来るでしょ。
 
だから全国あちこちでね、ちょっと天才の様な人がいるんですよ。
 
そういったのが残ってるんですよ。200年とか300年とか。
 
見るとね、やっぱり身震いする位いいんですよね」
 
 
 
 
-----ルパン・・・大塚・・・そして狛犬・・・何か結びつかないような感じで(笑)
 
 
 
 
「ええ結びつかないですね(笑)ジープも結びつかないし」
 
 
 
 
-----ジープは結びつきますよ。
 
 
 
 
「そうですか?・・・いやぁ・・・(照れ笑い)」
 
 
 
 
 
会場笑い
 
 
 
 
 
※明治・大正期の文庫
 
 
もしもアニメーターになってなかったら
 
 
 
-----それで今年でアニメの世界に入られて今年で50年という長い時間になりましたね。
 
 
 
 
「49年ですね」
 
 
 
 
-----49年ですか。来年で50年近くアニメの世界をずっとやってこられて、
 
半世紀ですけど、アニメ人生というと、どういうことをお感じになってますか。
 
 
 
 
「特にアニメだからっていう感じは持ってないですね。
 
どんな仕事でも50年やりゃあね、やっぱそれなりに・・・
 
自分の見解とかね、見識を持つようになるでしょうね。
 
アニメじゃなくても・・・もしかしたらそのままGメンやってても良かった。
 
Gメンはちょっと無理じゃないかと僕・・・やっぱ人を調べたりね、検察庁に送るっていうのはちょっと・・・」
 
 
 
 
-----もしかして人生で東映動画なかったとしたら、どういう道を?
 
 
 
 
「なんか漫画描いてたでしょうね」
 
 
 
 
-----政治漫画がお好きだとか。
 
 
 
 
「ええ。政治漫画描いてた。1コマ。
 
あの頃はね、政治漫画、ブームだったんですよ。漫画描くっていったら政治漫画がブームでしたね。
 
清水崑とかね。近藤日出造とかね。有名でね。あの時代ですからね」
 
 
 
 
-----また全然違った世界での大塚という漫画家が生まれてたかもしれないと。
 
 
 
 
「いやあ判らないですけどね、そりゃあね。
 
ただ漫画家じゃ駄目だったかもしんないですね。
 
あのう・・・僕、物がね、動くっつう事に関心がありましたからね。
 
非常に関心が強くてね。どうやって・・・作動原理っていうんですけどね、
 
どうやって・・・動き方が・・・こっちの方が動くとかね
 
(身振り手振り)
 
蒸気機関車は丸見えでしょ、それ。どっから蒸気が出て、どこ行って・・・どこから車輪が回って・・・
 
ああいう原理がね、好きなんですよ。
 
だからそういうことをよく調べてましたね。
 
人間が歩くっていうのはね、踵から足をつけて、つま先を最後まで残して、前に運んでって、
 
そういうね、バラバラにした物が好きだった。だから向いてたんですよ」
 
 
 
 
-----一個の動く物をずーーと追いかけたりね。
 
 
 
 
「そう。面白くてね」
 
 
 
 
-----でも今、狛犬追求って・・・狛犬動かないですよ?(笑)
 
動かな魅力ってのがあるんですか。
 
 
 
 
「ええ、動かないですよ(笑)形ですね」
 
 
 
大塚さんの本
 
 
 
-----ええと・・・そろそろお時間になっちゃったんですけど、
 
私としては大塚さんにちょっと・・・やっぱり・・・ちょっと見せて貰った方がいいかなと・・・
 
大塚康生的なルパンってのを何か・・・駄目?(笑)
 
観たいんだがなァ・・・(←おねだり風)
 
 
 
 
「折角遊んでるのにね(^^)」
 
 
 
 
 
会場笑い
 
 
 
 
 
-----モンキーさんもね、来年ルパン描いて40年。
 
ルパンのお祭りやったらどうなの、っていうと『いやいやいや・・・』。
 
いや、皆さん本当に謙虚だなあって。
 
改めて何か、もっと大騒ぎしてもいいんじゃないかって思ったりしてるんですけど、駄目ですか。
 
 
 
 
「ええ。駄目ですね」
 
 
 
 
-----ええーー・・・そんな事で大騒ぎしないんだったら、これ出たばっかりの
 
『アニメ夜話ルパン三世カリオストロの城大特集』
 
これ、売店に出てます
 
(会場笑い)
 
ええ、ついでにですね、もうひとつ。大塚さんの原型である
 
『ジープが町にやって来た』
 
ジープを描いて描いて・・・アメリカ軍のジープを描き続けて・・・
 
アメリカ兵に捕まってそういう時に描かれたんですね。それ程ジープにとりつかれた。この本もあります。
 
是非お手に取って読んで頂ければ大塚さんの又違った面も発見出来るんじゃないかなとそういう事です。
 
どうも時間です。どうも長い事ありがとうございました。大きな拍手を。
 
 
 
 
 
会場拍手
 
 
 
 
 
【どうもありがとうございました。本当に素敵なお話、有難うございました。
 
大塚康生さん、そして石子順さんでした。大きな拍手をお願い致します】
 
 
 
 
 
拍手に包まれながら、お二人退場
 
 
 
 
 
 
 
モンキーさんの時とはだいぶ会場の雰囲気が違ってた。
 
モンキーさんの人柄も気さくで楽しかったが笑いもあまり起こることなく
 
お客さんはまるで雲の上の人を見る様に遠慮しがちだった。
 
ピンと会場が張り詰めたような緊張感が漂ってた。
 
私はモンキーさんのおおらかな性格好きなんだけどな。
 
 
 
 
 
大塚さんの場合は司会のお姉さんがTシャツだったこともあるかもしれないが、
 
何より二回目に来てる人も多くてお客さんも慣れたのが要因だろう。
 
リラックスムードが漂い、笑いも頻繁に起きた。写真のフラッシュもさかんにたかれた。
 
結局私はやはりフラッシュに気兼ねして、トーク中のお二人の写真を撮ることが出来なかった(笑;)
 
 
 
 
 
大塚さんは声が高くて語尾がふわっと消えるという独特の話し方をされている。
 
ほのぼのというか、のんびりしたムードというか。
 
乗ってくるとマイクを持ってるのも忘れて大きなゼスチャーでお話される。
 
愉快な雰囲気。その分、聴き取るのに懸命でした^^;
 
石子さんもそのムードに引っ張られたところもあるのかもしれない。
 
膝の上の本を何度も落としそうになったり、体の無駄な力が抜けてる感じ。
 
モンキーさんの時より短い時間でトーク終了されました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
yusinさんはこの話を聞いて早速ジープの本を売店で買ってきた。
 
中に面白い絵があった。
 
上半分は緻密な描写のジープだが、下半分は描き殴り、漫画のような人間の足なのだ。
 
私は横から軽くしか見てないので詳しくは判りかねるが、
 
どうやら描いてる途中で続きが描けない状態になり、
 
仕方なく残りの空白部分をやけくその悔し紛れで人間の足にしたらしい。
 
「トトロ」にこんなの出て来そう、とたいやきさんと話す。
 
 
 
 
 
 
 
 
ところでこの「ほぼ実録」の会話ですが、丁度字に写し終え、確認終了した直後、
 
録音テープが絡まってグシャグシャになってしまい、再聴不可能になりました。
 
細かくテープを止めながら確認して写した挙句のテープ玉砕です。
 
写し終えた瞬間にもう聴けなくなった・・・というのが不思議な気持もしました。
 
形ある物はいつか壊れる。本懐を遂げて眠りについたのかという万感の想い・・・。
 
なんちゃって要は己がメカ音痴でMDで録音出来なかったというのが要因ですよ。
 
うーーむ。こういうのも運がいいといえるのだろうか? (^_^;
 
 
 
 
後半は上映作品のプチ感想と、その後のオフ会の様子をお届けします。
 
御礼:情報捕捉提供 池本剛さん
 

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